「理不尽社会に言葉の力を」 小森陽一著 からの 覚え書きです。
第2部 理不尽とたたかう言葉 第4章「自己責任」論と言葉を操るものの連帯
「生活困窮フリーター」の人たちに共通しているのは、
①教育課程からの排除(いじめ・不登校など)
②企業福祉からの排除(非正規労働)
③家庭福祉からの排除(家庭も貧困・不和)
④公的福祉からの排除(生保の水際作戦)
⑤自分自身からの排除(自分は生きる価値がない)
現状をどう認識するかが大事
「新自由主義」的な「強い個人の仮定」に基づく諸政策に対抗し、「弱い個人の仮定」を前提とした「政策構想力」を発揮するためには、まず現状をどう認識するかが大切。
大きく10の特徴に現状を分けてみましょう。
①何よりも多国籍企業の利益と支配力を優先し、それを巨大な軍事力の使用によって支えようとする。
②多国籍企業の利潤追求にあやかっている一部の人たちだけが儲かり、大多数が切り捨てられた結果としての所得の不平等が、地域、国家、国家間のそれぞれのレベルで放置される。
③地方自治体や国家による、社会福祉、社会保障、医療など、生きていくために不可欠な施策に、貨幣原理(受益者負担など)や選択原理が導入され、格差が拡大される。
④企業のみならず、公共機関までが効率性と収益性を重視して行動する結果、競争原理が、すべての社会生活を支配する。
⑤競争主義の結果、人々の社会的なつながりが断ち切られ、孤立化が進行する。
⑥人々は、物質的な充足だけを追求する消費文化だけに支配され、他の社会性や文化性から切り離されてしまう。
⑦その結果、 一部の労働組合を含めて、企業からの解一雇をおそれる労働者は、企業や一雇用者に忠誠を示しつづける従順な人間に飼い慣らされる。
③若者を中心に、教育の課程から多くの人々が排除され、人間としての能力を高める訓練の機会が奪われていく。
⑨社会階層の分断が急速に進み、階層と階層の間を移動する機会と条件が奪われ、階層間格差が拡大しながら固定化する。
⑩社会の構成員が、対等平等に国家の法律によって基本的人権を保障され、討議と合意によって社会を運営していく民主主義が、職場、地域、国家、そして国際関係においても抑圧され、破壊されていく。
この10の攻撃を押し返し、はねのけていくために
一〇番目から逆の順番で、押し返すための方策を考えてみましょう。
⑩職場や地域、そして国家のそれぞれのレベルで、 一人ひとりの基本的人権が保障されるように、民主的な討議の場を組織し、それを実現していく具体的な方策を決定し、実践していくこと。
⑨社会階層間の格差を是正する方策をとり、低所得階層から抜け出すための、階層間の連帯をつくりだしていくこと。
⑧公教育を拡充し、人間としての能力を高めていく訓練の場を、あらゆる年齢層を対象につくること。
⑦企業に対して労働者の権利を守ることのできる労働組合の組織化と運動の再構築を図ること。
⑥消費主体だけにさせられてしまうことを拒み、生活そのものの社会性と文化性を取り戻し、生
産の主体としての人間能力を取り戻すこと。
⑤競争主義を拒み、職場や地域における人と人との関係をつなぎ直す、新しい連帯の運動を生活のすべての分野で組織すること。
④職場、地方自治体、国家の各レベルで、競争主義と効率性と収益性を煽るイデオロギーを批判し、そうしたイデオロギーに基づいた法制度を改変していくこと。
③地方向治体や国家に対し、憲法第二五条第二項に基づく「社会福祉、社会保障、公衆衛生の増進と向上」の義務を果たさせる広範な国民運動を組織し、かつ相互につながっていくこと。
②大企業や富裕層に対して、応分な社会的負担を担う法制度を実現していくこと。
①アメリカを中心とした軍事力による多国籍企業の利潤追求の暴走を止める、国際的な連帯を形成すること。